「シャンプー後に髪が絡まる」
「シャンプー後に髪がキシつく」
「シャンプーだけだと髪が広がる」
乾燥の時期に入ると必ずといっていいほど聞かれる髪のお悩みです。
良質なシャンプーをつかっても、奮発して高いシャンプーを使っても、結局は逃れられない髪のキシみ。
ではそもそも髪のキシみと何なのか?
キシつかないためには何が必要なのか?
冬の乾燥対策には何が有効なのか?
今回はそのあたりについて触れたいと思います。
【キシつくとは】
まずはキシつきの原因ですが、最も代表的な例を挙げると「キューティクルが開いている」ことが非常に多いです。
一目瞭然ですが、左が健康毛、右がダメージを負った髪の写真です。
健康毛のキューティクルがピッタリと閉じているのに対し、ダメージ毛はボソボソとキューティクルが浮き上がっているのが分かりますね。
この状態は髪の手触りが悪く、キューティクル同士が引っ掛かるので髪が絡まる原因となります。
本来髪の中身を守る鱗の役割をするキューティクルが欠ければ当然ダメージは内部にも及びますし、毛髪内部のタンパク質が流出し、より大きなダメージを招くことになります。
これが”キシつく髪”の状態です。
【キシつく原因】
髪の毛は何もしなくても、日々ストレスにさらされ傷つくものです。
稀に「本当に髪が頑丈で内をしてもノンダメージ♪」な方もいるにはいますが、それは少数派。
大抵の場合は髪のコンディションを整える必要がありますし、いち美容師としてはできるだけ気を使って欲しいのが本音であります。
で、何が原因で髪が傷む(キシつく)のか、その原因を大きく3つ挙げてみます。
①薬剤ダメージ
カラーやパーマ、処理の悪い縮毛矯正などが該当しますが、化学的な薬剤は基本的に髪を傷めます。
髪の等電点(理想のpHバランス)は4,5~5,5の弱酸性で、等電点よりも酸性に寄ればキューティクルは固く閉じ(収れん)、アルカリ性に寄ればキューティクルは開きます(膨潤)
大半の薬剤はアルカリ性のため、キューティクルを開くことで薬剤の浸透を促進するわけですが、後処理が不適切だとpHが等電点に戻らずにダメージに繋がります。
また、酸性に寄り過ぎるとキューティクルが固く閉じるわけですが、こっちはこっちで髪質が固くなり、手触りが悪くなることがあります。
ちなみに海はpH8前後の弱アルカリ性、なので海遊びの後に髪がギシギシになるのは誰でも経験があるのではないでしょうか。
常に等電点に近い弱酸性を保つことが美髪をキープする上で大切なことが分かりますね。
②摩擦ダメージ
キューティクルには微量の油分が含まれており、滑らかな艶や手触りを維持する大切な役目があります。
しかし何かしらの原因でキューティクルがめくれ始めると、髪同士が引っ掛かるようになり、摩擦が発生しやすい状態に。
この摩擦を軽減する対処をしないと髪がキシつく・絡む・パサつくようになり、薬剤ダメージや熱ダメージに対して非常に弱くなってしまいます。
シャンプーは泡立ち良く滑らかな泡質のものを、コンディショナーやトリートメントはベタつかずにしっとり指通りが良くなるものを。
乾かす前にはブラッシングで指通りを良くしてから乾かし、とにかく髪の引っ掛かりを無くしてあげることが大切です。
極稀にですが、引っ掛かりを放っておいたせいで髪が団子状に絡まり、収拾がつかなくなってしまった方もいます。
ここまで来るとほぐして元通りにすることが非常に難しく、泣く泣く根元から切る羽目になります。
滅多に無いことではありますが、最悪こういった事例にもなり得るということは分かってもらえると思います。
③熱ダメージ
以前に「コテやアイロンの温度」でも触れましたので、簡単に。
高熱は髪のタンパク質を変性させ、手触りが悪くなったり、髪質がボソボソと固くなる原因になります。
勘違いしがちですが、髪が水分を含むのではなく、髪の素になるタンパク質に水分が含まれます。
そのタンパク質が変性し、水分を維持できなくなる=髪が乾くと同じ意味であり、カラカラになった髪は簡単に割れるようになり、これが枝毛の原因になるわけです。
健康な髪の状態であれば、濡れた髪で60℃前後、乾いた髪で130℃前後を目安にタンパク変性が始まります。
シンプルにコテやアイロンの温度を下げたり、熱ダメージを軽減するトリートメントを使いましょう。
【まとめ】
長々と書きましたが、突き詰めると結局ホームケアはシンプルになります。
・PPT系の良質なシャンプーやコンディショナーを使う。
・ドライ前に浸透性の高いケアオイルを使う。
・ブラッシング後にしっかりとドライをして、フィニッシングオイルで保湿をする。
この3つだけ。
細かいことを言えばもっと沢山ありますが、シンプルで簡単に、毎日できるケアの究極系はこの3つだと思います。
髪も肌も、ある日突然トラブルを起こすわけではありません。
全ての原因は日々の積み重ねであり、それらはすぐに治ることもありません。
千里の道も一歩から、毎日のルーティーンを意識することが美容の最短の道なのです。