世の中には様々なヘアケアやコスメ商材がありますが、ここ10年くらい業界を席捲し続けたのは『天然由来』というキーワードでしょう。
オーガニックやボタニカル、無添加やヴィーガン等、ドラッグストアやネットショップには色々な商品が並んでいますね。
ヘアケアに限って言えば近年はシリコンを含む商品が敬遠され、ノンシリコン商品が台頭し、それがオーガニックやボタニカルへと続いたわけです。
どうもイメージが先行していますが、先に言っておきますと「オーガニックやボタニカル=天然由来=肌や髪に優しい」という理屈はあまり正確ではありません。
過剰な広告宣伝によりイメージが一人歩きしているので、今回はそのあたりに触れたいと思います。
【そもそも】
「オーガニックやボタニカルって何?」というところからスタートです。
お野菜については「3年以上有機化学肥料を使用していない土壌で栽培した作物」と定義されています。
「何で野菜の話?」となりますが、化粧品業界では明確なオーガニックやボタニカルに対する基準が無く、基本的にはどの商品でもそういった宣伝をして良いことになっています。
当然どの程度きちんと商品イメージに沿って販売しているかは各メーカー異なりますが、そもそも基準が無いので比べようが無いのが実情だと思います。
端的に言えば「オーガニックやボタニカルであろうとなかろうと、商品の性能には一切関係無い」ということです。
何故かこういった「オーガニック商材は安心安全」というイメージが定着していますが、それも一切関係ありません。
オーガニックとは「動植物や微生物を含む自然環境に配慮した栽培方法」なのであって「人間に対しての安心安全」を保障するものではありません。
ついでに言えば”天然由来”も同様で、化粧品の素材の殆どは天然由来です。
よく槍玉に挙げられる「ラウレス硫酸」や「ラウリル硫酸」は石油由来の成分ですが、石油こそ地球上で最もありふれた天然由来の産物ですよ。
【無農薬とも違う】
あくまで「有機化学肥料を使用していない」ということで、これは無農薬とは意味が違います。
日本(有機JAS法)の栽培基準だと約40種の農薬は使用して良いことになっているようです。
ただし、種類は制限しても使用量に関する制限は無いようで、この辺りは未だに賛否両論あるみたいですね。
比較的フランスやオーストラリアなどでは厳格な基準が設けられており、それらを代表する団体からの認証がそのまま宣伝広告に使われたりもします。
それでも「化粧品としての安全の担保になっているか?」というと、そういうわけでもないようで、結局何のための認証なのかは微妙にハッキリしないと個人的には感じています。
【100%オーガニックは不可能】
もしシャンプーやコンディショナーを作る原料がオーガニック由来だったとしても、厳密に言えば100%それだけで製造するというのは現実的に極めて難しいものです。
(不可能ではありませんし、実際にそういった商品もあるようです)
どのような商品であれ、防腐剤や保湿成分やコンディショニング成分などは人工的に、科学的に作られるからです。
あらゆる化粧品は全て殺菌・消毒した施設で化学合成して作られるものになりますので、やはりオーガニックとかボタニカルとかはあまり関係の無い話なのであります。
ついでに言うと、オーガニック系のヘアケアは全般的にあまり使用感に優れたものが作れません。
キシつきやゴワつきが生まれやすく、それを解消するためにコーティング剤に頼る傾向が強いんですね。
実際に知り合いがかなり気合の入ったヴィーガンシャンプーを製造・販売していますが「全くリピートされず在庫処分に困っている」と聞いています。
「動植物への影響を考慮する」「地球環境の未来を考える」ことは大切なことなのは分かります。
しかしユーザーは正直なもので「使用感が悪いから使わない」という残酷な現実があるわけです。
ちなみに、ヴィーガンシャンプーの社長様は1回で懲りたようで、天然由来推しは止めて品質を上げる方向にシフトしたようです(笑)
【まとめ】
「オーガニックだから」「ボタニカルだから」という理由が、商品の良し悪しには関係ないことは理解していただけたと思います。
念のために補足しておくと、だからと言ってオーガニック商材が悪いということではありません。
オーガニックの本来の意義に沿って、良質な商品を作っているメーカーもあります。
注意すべきは『大して中身の無い商品にも関わらず”天然由来”をこれみよがしにアピールする商品』です。
「天然由来だから安心安全」
「オーガニックだから肌に優しい」
「ボタニカル成分で髪がツルツル」
この手の宣伝広告は全く意味を持ちません。
ヘアケア製品やコスメ製品には成分表示義務があり、それらは嘘をつきません。
商品の性能を決めるのも、安全性を確保するのも、全て配合成分や処方であり、天然成分とか合成成分ではありません。
そのあたりに注意して商品を選ぶように気を付けましょう。