手や顔、体を洗うため、毎日必ず使う石けんのお話です。
近年はコロナウィルスの影響もあり、石けんで手を洗う機会が以前よりも増えたのではないでしょうか?
洗浄を目的とするのはもちろんのこと、殺菌だったり、防臭だったり、色々な面で活躍する石けんですが、実際にその詳細を知らないという方も少なくないでしょう。
シャンプーと同様、その原材料や製法で大きく性能が変わる石けんについて、紐解いていきます。
【石けんの作り方】
まずは石けんの製法についてですが、大きく分けると
①油脂そのものをアルカリ剤で加水分解し加熱する『釜炊き鹸化法』
②加熱しないで鹸化する『冷製法』
③油脂から抽出した脂肪酸とアルカリを反応させる『中和法』
の3つに分かれます。
実際はもう少し細かいのですが、ややこしくなるので割愛。
要は油脂(脂肪酸)とアルカリ剤を混ぜると石けんになるということです。
【釜焚き鹸化法】
伝統的な製法で、油脂に苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)や苛性カリ(水酸化カリウム)を混ぜながら加熱することで石けんを作ります。
さらに塩析(不純物を取り除く)という工程を経て石けんの純度を上げたりすることもあり、むしろ塩析をしないと肌への刺激となる成分が残留することがあり、あまり一般的ではありません。
一般的には多少の不純物(主にグリセリン等)が残るため過剰に皮脂を奪うことがなく、肌のつっぱり感や乾燥を和らげるとされています。
しかし、場合によっては変性が早まることもあるようです。
【冷製法】
文字通り過熱をせず、油脂に苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)を加え、その反応熱だけで石けんを作ります。
低温で処理されるため油脂に含まれる成分が壊れることなく残るので、保湿効果を狙う石けんを作りやすく、肌に優しいのが特徴。
ただし不純物が多い状態で仕上がるため、泡立ちが悪かったり湿度で溶けたりすることも多く、またコストが高くなる傾向があり大量生産には向きません。
家庭で作るオリジナル石けん等もこれに該当します。
【中和法】
油脂を脂肪分(脂肪酸)とグリセリンに分解し、脂肪分だけに苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)や苛性カリ(水酸化カリウム)に反応させて石けんを作ります。
あらかじめ不純物を取り除いた状態から製造を開始するので純度の高い石けんが作りやすく、脂肪酸の種類を選べるため低刺激なものや泡立ちの良いものなどの調整が容易になります。
大量生産の石けんは大体この製法で作られますが、グリセリンをはじめとする保湿成分(不純物)を含まないため洗い上がりの保湿性に欠け、肌のつっぱりや乾燥の原因にもなります。
【固形と液体】
苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)で石けんを作ると固形石鹸に、苛性カリ(水酸化カリウム)で石けんを作ると液体石鹼(ハンドソープやボディソープ)になります。
液体石鹸は考え方としてはシャンプーに近く、主に水と界面活性剤を用いて作られます。
つまり良くも悪くも配合される成分によって、大きく性能が左右されるとも言えるわけです。
ざっくり特徴を挙げると
◆固形石鹸
・アルカリ性のため、皮脂や角質を洗い落とす洗浄性
・簡単に洗い流せる
・基本的にコスパが良い
◇液体石鹸
・肌に優しい弱酸性
・泡立てるのが楽
・外気に触れないので、衛生面で安心
・美容成分や保湿成分を配合するバリエーションが豊富
といったところでしょうか。
固形石鹸と液体石鹸は原料が異なるためpH値に差があり、固形石鹸は主にアルカリ性、対する液体石鹸は主に弱酸性になります。
pHと洗浄性というのは異なる括りの話になりますが、それぞれにメリット、デメリットがあります。
まずアルカリ性は油に馴染みやすく、油汚れや皮脂を落とすことに長けています。
しかし人の肌はアルカリに寄るほどデメリットが増え、肌のバリア機能(=常在菌)が減ることで肌トラブルの原因になり得ます。
一度アルカリ性に傾いた肌が元の弱酸性に戻るには約8時間程度が必要だと言われ、その間はバリア機能が弱まった無防備な状態になってしまうということです。
対する弱酸性は人の体のpHに近く、肌に負担をかけず潤いを保ちながら洗える特徴があり、ある程度の洗浄性も持ち合わせます。
どちらが良い悪いとまでは言及しませんが、ひと昔前とは違って現代は酸性領域でも一定水準の洗浄性は作れるようになっております。
一般的には酸性>アルカリ性と言う感じで、肌への負担を考慮し弱酸性を保つのが正解だと思われます。
まとめ
お風呂で体を洗うのもさることながら、近年はコロナウィルスの影響により手を洗う機会も増えたと思います。
固形石鹸と液体石鹸、どちらが良い悪いでは断じませんが、その特性を知れば何が必要か見えてくるのではないでしょうか?
先述したようにデメリットが多いと思われる固形石鹸も原材料を工夫し、有名な牛乳石鹼や米ぬかを配合した石鹸など、肌の保湿を考えた商品も少なくありません。
ついでに固形石鹸の中でも透明な石鹸にはグリセリンや砂糖、エタノール等の保湿成分が含まれることが多く、基本的に肌に優しい仕上がりのものも多いようです。
個人的にはボディソープの方が優れていると思いますが「やっぱり石鹸て固形だよね」という方も少なからずいるでしょう。
よほどの汗っかきの方以外は、しっかりと肌に優しいものを選んであげましょう。