今回は化粧品に使われる『素材』のお話。
髪を綺麗に保つ上で欠かせない成分のひとつ、シルクについてです。
滑らかな光沢や質感を持つシルクは古来より服や装飾品に用いられてきましたが、ヘアケアや美容に対しても非常に有用なものであります。
今回はそのシルクについて、紐解いていきたいと思います。
【シルクとは?】
言わずもがな、蛾の幼虫である『蚕の繭』です。
繭を作り、幼虫から成虫になるまでその中で過ごし、外敵や自然現象から身を守ります。
蚕はとても繊細で不思議な生物、唯一家畜化された昆虫とも言われています。
野生回帰能力を完全に失った生物として知られ、人が世話をしないと絶滅する可能性があるとさえ言われています。
そんな蚕は農薬や化学物質にとても敏感であり、その詳細を説明していきましょう。
まず蚕は主に桑の葉を食べますが、そのタンパク質やビタミン類やアミノ酸を吸収した後に体内で動物性タンパク質を合成し、口から吐き出したものが絹糸になります。
蚕の体内には『フィブロイン』と『セリシン』というタンパク質が備わっており、その2つが空気に触れると固まることで厚みのある繭になっていくわけです。
これらは繭糸と呼ばれ、様々なものに転用される繊維原料となっていきます。
【フィブロイン】
白くて細い繊維状の糸で、繭の約70%はフィブロインです。
人の肌を構成するグリシン・アラニン・・チロシン・セリンなど18種のアミノ酸で構成されpHも弱酸性と、人の髪や肌に非常に近い性質を持っています。
また保湿作用や角化健全性を持ち、肌の保湿や角質層の再生を促す効果が報告されており、長期的な使用により美肌を育てる効果があります。
【セリシン】
上記のフィブロインを覆うように守っているのがセリシンです。
髪の主成分であるケラチンや、肌の天然保湿因子(NMF=アミノ酸の一種)に極めて近い性質を持っています。
製糸工場で働く人の手が綺麗なのは有名な話で、現在では化粧水や乳液などの化粧品に使われます。
外敵から身を守る蚕のように強力なバリア機能が紫外線や外的刺激から肌を守り、また活性酸素を除去する効果があるのでアンチエイジングにも効果的だと言われています。
【髪に対して】
一般的にヘアケアに使われるのは『加水分解シルク』や『シルクPPT』と呼ばれ、髪に対しての浸透性や吸着性に優れ保湿効果が期待され、サラサラな感触を与えます。
似たような保湿成分としてはコラーゲンが挙げられますが、コラーゲンは比較的しっとりと、シルクは比較的サラサラな質感が特徴的です。
シャンプーに用いられるものとしては「ラウロイル加水分解シルクNa」や、その上位互換である「ラウロイルシルクアミノ酸Na」などが使用されます。
肌に対する保湿や髪に対するコンディショニング性を併せ持つ、現状での最高級な洗浄成分になります。
ただし非常に高価なため、メインの洗浄成分に使われる製品は多くありません。
主に補助的に添加されることが多く、場合によっては1%以下の配合でも「PPT配合!」を謳うメーカーもあったりするので注意。
【まとめ】
人の「美」を支え続けるシルクの効果について、少しは参考になりましたでしょうか?
同じシルクでも黄金色に輝くゴールデンシルクや、抗酸化作用を持つフラボノイドを含む緑のシルク、それらを化学処理ではなく熱湯で抽出するローシルクなど、用途や効能により多岐に分かれます。
衣料品はもちろん、化粧品やヘアケア製品にまで使われるシルクは基本的に上質なものです。
もちろん価格にも反映されるものが大多数ではありますが、それを補って余りある効果があります。
そんなシルクを使用したシャンプーやトリートメントは、髪に柔軟性とツヤをもたらします。
ぜひ、一度は試してみてください。