食料品や化粧品を含め、あらゆるものに使われる防腐剤のお話です。
時として「肌に害を与える代表格」のように扱われ、何かと嫌われる存在である防腐剤。
化粧品にとっての防腐剤はどのような役割を担い、どのようなデメリットがあるのでしょうか?
最近は『○○フリー』という宣伝文句が流行しているのもあり、防腐剤を使う商品は肌に優しくない粗悪な商品のように扱われがちですが、その割には防腐剤の詳細を知る人は多くありません。
あらゆる製品の安全を保ちながらも消費者からは嫌われる不遇の存在、防腐剤について紐解いていきます。
【何で必要?】
答えはシンプルで「菌だらけだから」
先述したように食料品や化粧品をはじめ、基本的にあらゆるものに防腐剤は使われます。
厳密に言えば「使われる」と言うよりは「必須」と言った方が正しいかもしれません。
まずは防腐剤についてですが、ざっくり工業用・食品添加物・医療品防腐剤の3つに分けられます。
それぞれに役割があり、食料品や医療品(化粧品)に使われる防腐剤は「微生物の侵入・発育・増殖を防ぐ」のみが目的であり、消毒や殺菌とは違うものであると定義されています。
要は微生物や菌が製品に混入しないように、混入しても人に害が出るほどまで増殖しないようにするために必要なものだということです。
化粧品を製造する際は非常に清潔で消毒された場所で作るわけですが、どんなに頑張っても菌が混入する可能性はゼロにはなりません。
化粧品を作る原料に混入してたり。
製造過程で混入したり。
購入した方の家で混入したり。
新しく詰め替える際に混入したり。
ましてシャンプーやトリートメントは普通、高温多湿なお風呂場に置きっぱなしですからね。
菌サイドからすれば絶好の繁殖の場所ともいえるわけですよ。
製品の安全性もさることながら、製品の”安定性”にも繋がるお話なのであります。
いずれにせよ化粧品の主原料は”水”なので、微生物や雑菌が繁殖しやすい水にとって防腐剤は必要不可欠なものであることは理解いただけたかと思います。
【合成と天然】
防腐剤には合成防腐剤と天然防腐剤があります。
合成防腐剤は抗菌効果が高いので商品を常温で置いておいても品質を維持しやすく、またコストが(比較的)安いので商品の価格を抑えられるメリットがあります。
一方で濃度が高いと刺激性が高く発癌性の疑いがあり、また抗菌効果が強すぎるためにお肌に必要な菌まで殺してしまう(可能性がある)デメリットも存在します。
基本的には国内で流通する商品には使用できる量の上限がありますし、また上限ギリギリまで防腐剤を使うことは稀ではあります。
◆代表的な合成防腐剤
・パラベン
・安息香酸Na
・サリチル酸
・フェノキシエタノール
・ソルビン酸K
基本的には2~3種の防腐剤を併用しますが、大事なのは「複数の防腐剤が入ってるから濃度が高い」ということではないというところ。
それぞれに役割があるので複数の防腐剤を使うということで、各々の守備範囲が異なるわけです。
対する天然防腐剤は殺菌・抗菌効果は大きく劣るため長期保存が難しく、天然由来のエキスやオイルはコストが高いので商品価格まで上がる傾向があります。
また、正確には「抗菌効果が認められるので合成防腐剤を減らしても良い」という意味合いの方が強いので、それだけで安全性を確保できるとは考えにくいかなと。
100%天然防腐剤だけの商品もあるにはありますが、やはり品質の維持や長期保存は極めて難しいだろうと思われます。
◆代表的な天然防腐剤
・ハーブ系の花弁・葉から抽出されるエキス類
・種子・花弁・葉から抽出されるオイル類
良くも悪くも抗菌成分以外の不純物が含まれるので、逆に天然成分に対してのアレルギーが発症することもあると言われています。
どちらも一長一短、メリットとデメリットがあるので甲乙つけがたい存在だというのが分かりますね。
というか、実際には両方を組み合わせて幅広く抗菌効果を持たせる商品が大半なんですけどね。
合成であれ天然であれ、1種の防腐剤で全ての菌に対して効果を持たせることは不可能です。
細菌・真菌・微生物を幅広くカバーするとなると複数の防腐剤が必要になります。
そして合成防腐剤フリーな商品はコストが高くなる上に消費期限が短くなるので、販売する側としてのメリットが少ないわけですな。
さらに言えば極少量の強力な防腐剤と、抗菌力の弱い大量の防腐剤と、どちらが悪影響なのかの判定はあまり研究されていないようで、未だにハッキリとした答えが見つかりません。
肌への影響を考え「とにかく防腐剤フリーを‼」という考え方自体は否定しませんが、個人的にはシンプルにヘアケア商品の性能で選んだ方が良いと思います。
ましてや、サロンクオリティ(一部除く)の製品であれば可能な限り防腐剤を減らす工夫はしているものですし、実際に「防腐剤のせいで肌が荒れた」という研究結果もほとんどありません。
【防腐剤フリー】
一部のメーカーでは完全に防腐剤を使用しない商品も見受けられますが、そういった商品は主に抗菌性の高い成分を添加します。
代表的な例で言えば酸化銀とか、ティーツリーオイルとか。
ただし防腐剤を使用しない商品は極端に消費期限が短くなり、ロットを細かく調整する必要があるので単純にコストの増加に繋がります。
消費期間自体は結構バラつきがあるようで、大体3カ月~1年くらいが相場のようです。
ちなみに、通常の化粧品は「未開封で3年」が国の基準の目安になっています。
また、代表的な防腐剤であるパラベンを使わないことで「パラベンフリー」を謳う商品が多いですが、パラベンフリー=防腐剤不使用という意味ではありませんのでご注意を。
3年間の保存が担保できない商品については「目立つところに消費期限を記載する」ルールがありますが、逆に言えばそういった記載が無い商品は全て防腐剤が使われているということにもなります。
【まとめ】
合成防腐剤でも天然防腐剤でも、基本的には「肌に良い」ものではありません。
それでも毎日防腐剤の入っている化粧品を使うのは「洗顔やシャンプーをしない方がマズい」からであり、あまりヒステリックに嫌う必要はないのではないかと思います。
気にするなとは言いませんが「もっと他に気にするところはあるんじゃないかな」というのが本音ですね。
商品の安心・安全を維持するために使われているものです。
毛嫌いせずにもう少しだけ、理解をしてあげましょう。