もうテーマからして読む気が失せると思いますが、今日はちょっと小難しい話。
しかしヘアケアやスキンケアを語る上で、絶対に避けては通れないお話でもあります。
そのテーマはズバリ『浸透』
美容成分や有効成分が髪や肌に「浸透する」とアピールする化粧品が世に溢れています。
では浸透とは何なのか?
どういった成分が、どのように肌に浸透するのか?
今回はそういった『浸透』のメカニズムについて触れてみたいと思います。
【分子量】
そもそもですが、何かが肌に浸透するにはいくつか条件があります。
当たり前ですが、髪や肌に何かをつけてもそう簡単には浸透しません。
何でもかんでも浸透したら大変ですからね。
メイク道具に触ったり、洗剤触ったり、絵の具なんか触った日にはえらいことになります。
つまり、世の中にある大抵のものは髪や肌には浸透しないわけです。
スキンケアを例に挙げると、浸透のメカニズムで大事なのはまず『分子量=分子の大きさ』です。
正常な皮膚の場合、肌表面を透過するには「分子量500以下」が基本になります。
(※髪は分子量1000~3000くらい)
で、、「分子量って何?」という話。
すごく簡単に言うと「分子を作っている元素の、原子量を足したもの」です。
例えば水素(H)の原子量1.01
酸素(O)の原子量は16.0
つまり、水(H2O)=1.01×2+16.0=18.02ということで、水の分子量は18くらいということが分かります。
お風呂に入って肌がふやけるのはこういったメカニズムから来るわけです。
ちなみに、多糖類は80万前後(例外あり)でヒアルロン酸は100万前後。
どう転んでも肌には絶対浸透するわけもなく、以前『ヒューメクタントについて』でも触れましたが、ポリマーや多糖体が水を抱え込む性質はこの分子量によるものです。
少し例が極端ですが、さも浸透するような成分PRを繰り返しながら、実は分子量が数千~数万なんてことは美容業界ではよくある話です。
【水性?油性?】
皮膚の表面、いわゆる『角質層』の厚みは0.02ミリ、その薄い皮1枚の中にバリア機能と保湿機能を持っています。
角質層は基本的に油溶性成分の方が吸収されやすく、角質層よりも下の部分は水性成分の方が吸収されやすい特徴があります。
つまり角質層を取り除けば、皮膚の吸収性は高まるということ。
なのでピーリング等の角質層を溶かすようなアプローチは、ある意味で理にかなっているとも言えますね。
個人的には皮膚のバリア機能も著しく低下するので、全くオススメしませんが。
美容成分は水に溶けやすかったり、油に溶けやすかったり、原料により差があります。
ものすごくザックリ言うと、水性成分が無いと美容効果(美白や肌キメetc..)が薄く、油性成分が無いと保湿性に欠ける傾向があります。
なのでそれらをまとめて使うために、水にも油にも溶けやすい『両親媒性』という性質のものを利用するわけです。
厳密には同じ分類ではありませんが、水と油を混ぜる目的で使う『界面活性剤』が最も代表的な例。
界面活性剤と聞くと昨今のイメージ戦略でネガティブに捉える人も多いのですが、界面活性剤って要は『乳化剤』ですからね。
水に油が混ざると白濁して乳液上になり、水っぽい質感とオイルっぽい馴染みやすさを両立できるようになります。
一部例外はありますが、よほど特殊な乳液でなければほぼ全部の乳液に乳化剤=界面活性剤が使われると言っても良いでしょう。
じゃないと混ざらないからね。
【まとめ】
一応念を押しておきますが、皮膚への透過性だけが化粧品の性能を左右するわけではありません。
しかし以上の点を踏まえ「分子量500以下+両親媒性」という条件が、肌への浸透を可能にするということは理解いただけたかと思います。
そして、デタラメな浸透性をアピールするメーカーも決して少なくないのもうっすらと気づいていただけたかと。。
しかし、肌内部への浸透を促す調剤技術も存在するっぽいです。
(※化粧品では肌深部への浸透をPRすることはできません)
ただ「角質層を透過して真皮まで届いた」と確認する術が無いんですよね。
また近年は、肌深部への浸透をせずとも肌内部の細胞へ働きかける成分もあるという研究結果も出ております。
しかしどれも高度な技術であり、またコストがかかるものでもあり、低価格な製品で実用できるものではありません。
常々言っておりますが、化粧品に関して大切なのは成分だけではありません。
成分をより有効に活かす処方(組み合わせ)や、より効率よく吸収させる調剤技術の方が大切だと断言もできます。
今使っているシャンプーやトリートメント、またはスキンケアコスメなど、それらを使っているハッキリとした理由はありますか?
耳ざわりの良い広告で、中身も確かめずに安易に選んでいませんか?
肌や髪の悩みは個人差があり、悩む人はとことん悩むし、平気な人は全くもって平気なもの。
もし何か気がかりなことがあれば、今自分が使っている化粧品を見直してみてください。
そして当ブログが何かしら、解決への手助けができれば幸いです。
では。