洗剤や柔軟剤、ルームフレグランスや除菌スプレー、そしてシャンプーやトリートメント。
あらゆる商品が所狭しと並ぶドラッグストアなどでは機能面はもとより、その香りが購買意欲に繋がるため、各企業が調香に力を入れています。
化粧品には一般的に「香料」と表示されますが、その内容に気を配る人は多くはありません。
しかし香料が人体に与える影響は決して微々たるものではなく、日本よりも先に香料ビジネスに目をつけた欧米ではその危険性が危惧され、厳しい規制が設けられています。
現在の日本では厳格な規制は無く、ある意味で無法地帯と化しているのが現状ですが、その香料とはどういったものなのかを紐解いていきます。
香料とは
まず「香り」とは何ぞや?という話ですが、香りは”有機化合物の混合物”です。
その有機化合物は天然由来のものから抽出した天然香料や、化学合成した合成香料があり、それらを調香師が調合したものが我々の元へと届く「香り」になるわけです。
ちなみに、主に食品に使われる香料は「フレーバー」と呼ばれ、化粧品に使われる香料は「フレグランス」と呼ばれます。
ヘアケア製品に使う香料は全体の0,01%~0,5%程度で、これは香水やフレグランスに比べると極端に少ないものではあります。
人体への影響
現在は香料が”ウリ”になる時代に突入しています。
特に衣料用洗剤や柔軟剤などは、香り自体が商品の売り上げを左右すると言っても過言ではないでしょう。
「嫌な臭いをシャットアウト」
「〇〇の香りが一日中続く」
「汗臭くならない」
などなど、誰もが一度は聞いたことのあるフレーズでしょう。
各メーカーは売り上げを伸ばすために”香り”を強調することが非常に増えましたね。
これらは企業努力や調香師の努力の賜物だと言えますし、かつては超高級品だった香料が安価で持続性に富むようになったのは良いことだと言えます。
しかし、その反面で近年は「香害」と呼ばれる人体に対する影響も見直されるようになり、必ずしもプラスにだけなるものではないと認識されるようになっております。
注意されるのが「化学物質過敏症」と呼ばれる症状で、ある日に突然発症するものだと言われています。
海外メーカーの柔軟剤の売り上げが躍進した2008年頃から体調被害を訴える消費者が現れ、頭痛や吐き気、咳が出る等の症状が一気に増えたとされています。
香料の詳細
あくまで「香料」と表示されるだけに留まり、一般的な商品には香料の詳細を説明する義務はありません。
そもそも香料に使われる有機化合物の抽出方法だけでも数種類存在し、さらに天然香料と合成香料を調合するので非常に複雑になっていきます。
一般的な化粧品向けの香料だけでも3000~4000種あると言われており、現在ではそれら全ての安全性が担保されているとは言えないと思われます。
冒頭で述べたように日本では厳格な規制はほぼありません。
日本では使える香料や素材も、規制が厳しいEU諸国では使えないというケースも多いです。
当然各メーカーは消費者の安全を意識して商品作りをしていますし、香料だけが人体に影響を及ぼすとまでは言えません。
しかし、あくまで「香りがする=化学物質を鼻で吸い込んでいる」という認識は忘れてはならないものだと思います。
天然香料は高い
一般的な香料は天然香料と人工香料をブレンドすることがほとんどです。
天然由来の方が安心・安全で効果的というイメージがあると思いますが天然香料はコストが非常に高く、香りの幅が狭いためにバリエーションや香りの奥行きに欠けてしまいます。
また、人工香料を添加することで花や柑橘系に「限りなく近い」香りを安価に作れるようになったり、もしくは現実には存在しない良い香りを作れるようになったりします。
先述したような香りが原因となる「香害」も天然か人工かの問題ではなく、どちらかと言えば「強い香りを作るための添加物」の方が問題ではないのかと考えています。
ある意味では「より安価で、より持続性のある香りを求める」消費者自身に対する答えだとも言えますね。
つまり香りの「質」と「持続性」は別の問題であり、恐らくは「持続性」を伸ばせば伸ばすほどに無理が出てくるのではないかと思われます。
まとめ
希少な精油は極めて高価なものですし、それらを安価に使えるようにすること自体は悪いことではありません。
しかし、度を越えた「香りビジネス」が商品の本質を歪めているのもまた事実ではないでしょうか?
化粧品にしてもヘアケア商品にしても、本来は性能や効果で選ぶべきものですが、実際にはボトルデザインや香りが決め手になることが殆どです。
だからこそメーカーも品質ではなく香りを全面に売り出しますし、それこそが購買層が求めるものになっているのが現実でしょう。
香りに拘ること自体は全く悪いことではありませんが、香りが品質を左右することはありません。
良い香りが長時間持続する化粧品。
高い効果が長時間持続する化粧品。
本来はどちらを理由に選ぶべきか、今一度考える機会になればと思います。