『○○誘導体』って言葉、聞いたことないですか?
ヘアケアでもスキンケアでもよく使われる誘導体ですが、その実態を知っている人は多くはありません。
実際に美容師やエステティシャンでも、正確に知っている人は少ないと思います。
あらゆる化粧品で使われる誘導体について、今回は紐解いていきたいと思います。
誘導体
化学的な定義は「官能基の導入・酸化・還元・原子の置き換えなどにより、母体の性質や構造を大幅に変えない改変のこと」を指します。
眠くなる話ですな…zzz
簡単に言うと「原料が本来持っている機能を損なわず、より有用に作り変えること」であります。
もう少し具体的に言えば、大抵の場合は化粧品原料の”素材”に”何か”をくっつけて水や油に溶けやすくしたり、浸透性を高めたりすることです。
つまり素材をそのまま使うよりも「何かと組み合わせた方が効果的だよね」ということ。
牛タンをそのまま食べるより、塩とレモンとネギで食べた方が美味しいよねって話ですよ。
(※全然違います)
では何故に誘導体が必要なのでしょうか?
例えば
代表的な例がビタミンCですが、商品PRでよく使われる「生ビタミンC」とかはあまり意味が無いんですね。
ビタミンC(アスコルビン酸)は極めて安定性が低く、すぐに酸素や水、金属イオン等と反応して効果を失ってしまいます。
断言はできませんが、そのまま使っても「高濃度なものをドバドバ塗りたくれば、多少は効果は発揮できるかな?」というくらい。
現実的に考えて効果的とまでは言いきれません。
それでは美白効果が望めないので、何とか肌の中で効果を発揮するように手を加える必要があるわけです。
なので、各メーカーがあらゆる角度から研究・実験を繰り返し「リン酸」をくっつけたり「グルコシド」をくっつけたりして安定化を図っています。
その結果、多少の課題は残っているものの、ある程度の効果が見込めたり見込めなかったりしていますが、純粋なビタミンCと比べていくらか改善されるようになりましたと。
これが『ビタミンC』誘導体になります。
つまり、誘導体とは「そのままじゃ使いづらい成分を、目指す機能に便利に配合できるよう改造する」ということですね。
ちなみにですが、ビタミンCにおいてはざっくりと①水溶性、②油溶性、③両親媒性(両溶性)で分けられます。
①水溶性
・リン酸アスコルビルMg
・アスコルビルリン酸Na
・アスコルビルグルコシド
・VCエチル
②油溶性
・テトラヘキシルデカン酸アスコルビル
③両親媒性
・パルミチン酸アスコルビルリン酸3Na
・イソステアリルアスコルビンリン酸2Na
・カプリリル2-グリセリルアスコルビン酸
などが代表的な成分になります。
各々に浸透型、持続型などの特徴があり、化粧水や乳液やクリーム等への配合で素材が変わるのですが、ここでは長くなるので省略。
次回まとめてお伝えします。
ヘアケアにおいて
そんな便利な誘導体ですが、当然ヘアケアにもこの技術は使われます。
最も分かりやすい例で言えばPPT誘導体、つまり髪を補修するペプチドに何らかの付加価値を加えたものです。
代表的なのは
①アシル化PPT
・水や油に溶けやすくしたもの。
・シャンプーやヘアオイルに使われる
②カチオン化PPT
・ダメージ部への吸着性を高めたもの。
・主にコンディショナーやトリートメント、ヘアカラー等にも使われる。
③シリル化PPT
・シリコンとくっつけて潤滑性や光沢、熱への耐性を高めたもの。
・ヘアオイルやコンディショナー、トリートメントに使われる。
④エチルエステル化PPT
・アルコール(エタノール)とくっつけたもの。
・アルコールや油に溶けやすく、マニキュアやヘアスプレーに使われる。
などなど、いずれもPPT原料で優秀な成分です。
シャンプーにせよトリートメントにせよ、ヘアケアにお悩みの方はこれらを中心に製品探しをするのも良いと思います。
まとめ
というわけで、今回は誘導体のお話でした。
総じて
●届きにくい場所へと届かせる(浸透性の向上)
●素材としての安定性を向上させる(品質の維持)
●配合成分として溶かしやすくする(配合濃度の向上)
という特徴があるのがお分かりいただけたと思います。
「こんなに素敵な素材なら、みんな使えば良いじゃん」て話なんですが、これら誘導体は基本的に高価なんですね。
あまり大きな声では言えませんが、ビタミンCの例で言えば誘導体の価格は通常のアスコルビン酸の30~50倍くらいが相場です(汗)
値段がそのまま効果に反映されるわけではないとしても、明らかに次元の異なる素材ということは分かっていただけるでしょう。
ヘアケアにしてもスキンケアにしても「有効な濃度で使用する=価格が高くなる」ということに繋がります。
当たり前ですが、原料会社は「サマーセールで大特価!!」みたいなことは絶対にやってくれません。
つまり、いわゆるプチプラ化粧品ではどんなに良い事ばかり並べたところで、その配合濃度は推して知るべし。
最初の方で述べましたが、原料を”生”で使うことは、品質の向上に繋がるとは限りません。
「生○○」とか「鮮度が良い」とか「純粋な成分」と言えば聞こえは良いですが、化粧品は食べ物ではないので、効率よく効果を発揮させるために化学処理が必要になるということです。
コスメ関連はどうしてもケミカルなものを嫌う傾向が強いのですが、品質の向上や安全性の担保は化学が請け負っております。
極端に言えば「どういった素材か?」よりも「どういった処理を施したか?」の方が品質には大事ということです。