シャンプーの基本「界面活性剤」

シャンプーの基本となる「界面活性剤」
ヘアケアやスカルプケアにおいて避けることのできないテーマですが、未だに正しくない知識を拡散している方も多く見受けられます。

メーカーと消費者の間で齟齬が無くならないのは何故か?
そこには巧妙なマーケティングとネガティブキャンペーンの影が見え隠れしています。
今回は、改めてシャンプーに使われる界面活性剤について、正しい知見を持って掘り下げていきます。

大前提として

シャンプーに使われる界面活性剤は、水中でイオン化する特性により「アニオン」「両性」「非イオン」の3種に分けられます。

現代のシャンプーは1種類の界面活性剤を単体で使うことはほとんどなく、複数の界面活性剤を混ぜることで「洗浄力の維持と低刺激の両立」を考えています。

この3種の界面活性剤を「どのように使うのか?」がシャンプーの性能を決める最も大きな要素と言ってもいいでしょう。

その働きの違いは、
①アニオン界面活性剤
洗浄性と起泡性を担うシャンプーの主役。
汚れを落とす力のほとんどを、ここが担います。

②両性界面活性剤
刺激緩和と泡の維持を担当。
アニオン界面活性剤による刺激を抑制し、潰れない強固な泡を保つ役割を持ちます。

③非イオン界面活性剤
乳化・可溶化・増粘を担当。
油性成分や香料、シリコーンなどを均一に分散させる働きがあります。

このように、それぞれの役割を持つ界面活性剤を組み合わせ、シャンプーの基本骨格が組み立てられます。
この時点で洗浄性・刺激性・泡立ち・コストの大半が決まります。

種類と特徴

ラウレス硫酸塩

例)ラウレス硫酸Na・ラウレス硫酸アンモニウム
「硫酸系」や「高級アルコール系」とも呼ばれ、流通するシャンプーで最も幅広く使われています。

洗浄力と泡立ちが最も優れ、またコストが比較的低いのが最大の特徴。
また原料臭が軽微で安定した性質を持っており、香料を活かしやすいメリットがあります。

一方で刺激性や強い洗浄力によるデメリットもあり、後述するオレフィン系の台頭もあり、中~高価格帯の商品では積極的には使われない傾向にあります。
主に低単価の商品によく使われます。

ちょっと専門的なお話

ラウレス硫酸塩は一般に刺激性が高いとされますが、これは配合されるポリオキシエチレン鎖の長さ(エトキシ化度)によって大きく異なります。
低EO数では刺激性が高まりますが、高EO数のラウレス硫酸Naは十分な安全性・マイルド性を確保し、大手メーカーのシャンプーにも使用されています。
単に「硫酸系だから悪い」という判断は、一概に正しいとは言えません

オレフィン系

例)オレフィン(C14-16)スルホン酸Na
ラウレス硫酸塩と同様に洗浄性と起泡性に優れます。

ラウレス硫酸塩よりも刺激が軽減されているとされ、ラウレス硫酸塩のイメージの悪化に伴い代替成分としてよく使われます。
製造コストが若干高くなるので、その分商品価格も若干高めになる傾向があります。

メインの洗浄成分として使うにはラウレス硫酸塩と同様に過度な洗浄性や刺激性が懸念されます。
泡立ちの補助として微量添加されることが多いようですが、若干のヌメりを感じる独特な感触があります。

酸性石けん系

例)ラウレス4-カルボン酸Na・ラウレス-〇酢酸Na
石けんとは異なり弱酸性下でも使える洗浄成分。
刺激性を抑えながらも、優れた泡質でサッパリと洗い流せるのが特徴。

一方で比較的コストが高く、また処方配合がやや難しい傾向があります。
美容性売品や中~高価格帯の市販品で使われる傾向が高いです。

スルホン酸系

例)ココイルイセチオン酸Na・スルホコハク酸ラウレス2Naなど
皮膚刺激が少なく、優れた起泡性を持ちます。
洗浄性は非常にマイルドですがコンディショニング性があり、洗い上がりのきしみを軽減します。

一方でコストが高く、単体では粘性が出にくいので処方設計が難しい即目があります。
低価格帯の商品ではあまり見かけません。

ベタイン系

例)コカミドプロピルベタイン・ラウラミドプロピルベタイン
刺激緩和の主役を務め、流通するほとんどのシャンプーに配合されます。
また、配合量によっては泡立ちをクリーミー(増粘作用)にする特徴があります。

一方で高配合すると泡切れが悪くなり、ヌメりとなって残ることがあります。
よく「赤ちゃんでも使える」と評されますが、それは刺激性のお話。
極稀ではありますが、アレルギーによる痒みや湿疹の原因にはなり得ます。

スルタイン系

例)ラウラミドプロピルヒドロキシスルタイン
ベタインと同様の働きをします。
「アミドスルホベタイン型」と呼ばれ、刺激を抑えながら上質な泡を作ります。
ベタイン系の上位互換であり、起泡性の弱いアミノ酸系界面活性剤の泡質を大幅に改善します。

一方で比較的コストが高く、中~高価格帯の商品で使われることが多いです。

アミノ酸系

例)ココイルグルタミン酸Na、ラウロイルメチルアラニンNaなど
(※タウリン系はアミノ酸に入らないという意見もありますが、ここでは割愛)

低刺激で保湿性を持ちます。
昨今は市販品でも積極的に取り入れられ「肌に優しいアミノ酸系」は一つの訴求性を持ちます。
髪に対しても肌に対しても保湿性を持ち、マイルドな洗浄性が持ち味です。

基本的に高価なので、主にサロン専売品や高価格帯の市販品に使われます。

一方で、マイルド過ぎて洗浄性に欠ける処方もしばしば。
本来洗い流すべき汚れや皮脂が落ち切らず、逆に皮膚へのデメリットをもたらす商品も見受けられます。

また、必ず「肌に優しい」とは限らず、アミノ酸(刺激性や起泡性に関わる親水基)の種類や脂肪酸鎖(洗浄性の源となる疎水基)によっては刺激の原因になる場合もあります。
「アミノ酸系だから肌に優しい」と一括りで考えるのは、少々大雑把かなと。

ちょっと専門的なお話

アミノ酸系界面活性剤の性能(洗浄力・刺激性・起泡性)は、アミノ酸の種類(例:グルタミン酸系、アラニン系、グリシン系など)と、それに結合している脂肪酸鎖の長さ(例:ココイル基、ラウロイル基など)の組み合わせによって全く異なります。
特にグルタミン酸系はマイルド性が高いとされますが、アラニン系やタウリン系は比較的洗浄力が高く、泡立ちも優れています。

PPT系

例)ココイル加水分解コラーゲンK・ラウロイルシルクアミノ酸Naなど

洗浄性と補修性を併せ持つ、唯一の界面活性剤です。
非常に高価なので、サロン専売品を含め一部の商品にしか使われません。

泡立ちは極めてマイルドで滑らか、傷んだ髪を優しく洗うと同時に補修します。
傷んだ髪に負担をかけずに洗うことが可能になり、さらにコンディショニング性まで付与できると、まさしく現役最強の洗浄成分です。

一方で非常に処方が難しく、安定的に起泡性を確保するには相応の技術が必要になります。
「高い+配合が難しい」のが、一般的に普及されない原因だと言えるでしょう。
(大量生産に向かないため)

イメージと現実

以上、ざっとではありますが、シャンプーに使われる界面活性剤を紹介しました。
実際にはこれらを緻密に組み合わせ、メーカーが狙う洗浄性・起泡性・安全性を考慮し商品化しています。

ちなみに、今述べたような「〇〇系」という括りはマーケティング用語です。

実際にシャンプーを作る側の認識とは異なり、化粧品研究員はこういった極端な分け方はしません。
つまり、作り手の考えとは違う認識が広まっているということでもあります。

個人的に懸念しているのが「一部インフルエンサーによるネガティブキャンペーンでの、消費者マインドの誘導」です。
かつて「シリコーンは害悪」が広く浸透した時の様に、事実でないことがユーザーの常識になってしまうことですね。

あらゆる化粧品は科学合成して作られるものなので、その安全性を考えるのは当たり前ではあります。
しかし、その当たり前を担うのはインフルエンサーではなく、メーカーの研究員です。
日々のたゆまぬ研究・実験によりデータを集め「これは安全、これは微妙」と繰り返しています。

そうやって得た安全性の確証が商品となり、国の認可を経て市場に並ぶわけです。
そういった現実を踏まえて考えれば、一部の美容家や美容師が同じ目線で商品の安全性を語るには無理があるのは容易に想像できるでしょう。

特に近年は「〇〇フリー」の流行もあり、何かを否定的に訴えることで自社製品の優位性をアピールする商法が増えています。
そういった一部メーカーの誘導に乗らず、自分で商品の良し悪しを考えることが大切な時代になってきたとも言えるでしょう。

美容の世界は無知だと損をする世界。
くれぐれもネガキャンで商品を判断することのないよう、イメージではなく中身で商品を選べるよう賢くなってください。

最後に、大雑把な私見ではありますが、私なりの市場の傾向を考えてみます。

◆大企業や大手メーカー
安全性は最も高いです。
低コストでも使用感に優れる処方を確立しており、また大量生産によるコストダウンで商品価格を抑えています。
良くも悪くも、誰が使っても相応の満足度があると思います。

◆大規模な中小メーカー
最も玉石混合、高品質な商品とイメージだけの商品が混在しています。
著名人をアンバサダーに設定したり、SNSマーケティングに力を入れているメーカーが多いです。
その分価格帯も高い傾向があり、コストと品質が釣り合っていない商品も見え隠れします。
大手メーカーよりは個性的な商品が多く、特に香りに力を入れる商品が多い傾向があります。

◆中小企業や小規模メーカー
弊社です(笑)
小規模ロットで細々と経営しているメーカーが多く、大半のサロンオリジナルの商品もここに該当します。
基本的に尖った商品が多く、頭皮環境改善やダメージ補修性が高いものが多いです。
その反面、原料にこだわるためコストが高く、また小規模のため製造コストも高くなるので、価格は高くなる傾向があります。
一部を除き、細々とSNSやインスタグラムで集客しているので、知名度が低いです。