「リンス」
「コンディショナー」
「トリートメント」
「システムトリートメント」
「酸熱トリートメント」
「アルカリ酸熱トリートメント」
「美髪ストレート」
一般的にヘアケアとして認知されている名称は、こんなところでしょうか。
今回はヘアケアにおけるトリートメントの分類と、曖昧になっている部分を明確にする区分けを行いたいと思います。
ホームケア用で何を使えば良いのか?
サロンメニューで何を選べば良いのか?
そのあたりを解説していきます。
【ホームケア】

まずは、最も身近なホームケア用から見てみましょう。
リンス、コンディショナー、トリートメントと分かれて販売されていますが、これには明確な定義はありません。
メーカーのマーケティング的な意味合いで呼称が決まっていると考えて結構です。
一般的なイメージとして、
リンスやコンディショナー=毎日使うもの
トリートメント=集中ケアとして使うもの
といったイメージが広く普及していますが、これも厳密な決まりはありません。
商品としての優劣に関わるものではないことなので、そこは気にしなくても良いと思います。
最も手軽なヘアケアとして、ダメージで流出した成分を物理的・イオン的に吸着させることを目的に作られます。
低分子または高分子のPPT(ケラチンやコラーゲン)がダメージホールを埋め(主に)水素結合で一時的に補強することで弾性を強化します。
言い方を変えると、水に濡れるだけで結合が切れる微弱な水素結合を利用するため、毎日の使用が不可欠だとも言えます。
また、第四級アンモニウム塩などのカチオン界面活性剤がマイナスに帯電したダメージ毛の表面に吸着します。
これにより、キューティクルの浮き上がりを抑えて平滑化することで指通りを改善します。
その他ではセラミドやコレステロールなどの細胞膜複合体(CMC)類似の脂質が、キューティクル間の接着をサポートし、水分の蒸散を防ぎます。
基本的には結合力が弱いため、シャンプーで落ちる前提になります。
持続的な補修効果は限定的で、一部を除き、基本的には毛髪内部のシスチン結合(毛髪の骨格)には作用しません。
【システムトリートメント】

たまに複数剤式のトリートメントが販売されていたりしますが、ここでは一般的なサロントリートメントとして解説します。
異なる分子量や電荷を持つ成分を段階的に作用させることで、トリートメント成分の毛髪への定着率(残留性)を高めたものを指します。
(カチオンとアニオンが反応し、毛髪内部で大きな分子を形成させるため)
一般的には3剤~4剤式のものが多く、それ以上の薬剤を含む場合は美容師オリジナルの使い方が多いと思います。
基本的には2週間~4週間程度の毛髪保護を目的に作られています。
①低分子のケラチンなどを毛髪深部に浸透させ、毛髪構造内部の架橋点を作ります。
②内部~外部補修成分(高分子PPTなど)を使い、毛髪浅部に静電気的な力や分子間力で重ね、定着させます。
③カチオン性高分子やシリコーンにより疎水性の被膜を作り、内部補修成分の流出を防ぎ、手触りや艶を改善します。
薬剤間の複合的なイオン結合を利用するため、一般的なトリートメントよりは即効性・持続性が高いです。
しかし、シスチン結合には限定的な作用しかないため、根本的なダメージ修復(強度回復)には限界があります。
【酸熱トリートメント】

(※上のイメージ図は、複雑で難解なメチレングリコール架橋=タンパク質同士の再連結を視覚的に説明するため、ものすごく簡略化しております)
(※イミン結合とも呼びます)
近年人気を集めている、比較的新しいカタチのトリートメントです。
毛髪のイオン結合と水素結合をコントロールし、熱の力で新たな擬似的な架橋構造を作り出します。
つまり、従来のトリートメントとは一線を画す、プロの技術が必要なトリートメントになります。
①主にグリオキシル酸やレブリン酸などのカルボン酸を使用しますが、強い酸性(pH1.5-3.0)領域では、毛髪のアミノ酸側鎖(アミノ基)がプラスに帯電します。
②ドライヤーやヘアアイロンの熱を加えることで、内部に浸透した酸が毛髪タンパク質の間の水酸基やアミノ基と結合し、分子間結合を強めます。
(これを「脱水縮合」と呼び、一時的に強い結合を形成し、髪のうねりや歪みをストレートに近い状態で固定します)
シスチン結合を切断しないため、理論上は髪へのダメージは少なく、特にハリコシを無くしたエイジング毛に有効だと言われています。
ただし、薬剤処理により毛髪の耐性は一時的に低下するため、仕上がりの完成度は美容師のスキルに大きく依存します。
【アルカリ酸熱トリートメント】
酸熱トリートメントの酸性の架橋作用に、還元剤によるシスチン結合への介入を加えた施術です。
何が違うのかの説明の前に、髪の毛とpHの関係について説明します。
まず、髪の毛の等電点(最も安定するpH)は4.5-5.5とされています。
これより酸性側に寄れば髪は収れん(縮む)し、アルカリ側に寄れば膨潤(緩む)します。
酸熱トリートメントが酸性領域で毛髪構造を強化するには、本来は微妙な膨潤(隙間を作る)ことが望ましいです。
しかし酸性領域では髪は縮こまり、隙間ができないのでトリートメント効果も限定的になってしまいます。
(※髪の深部ではなく、キューティクル付近の作用に留まるという意味)
その弱点を補うのが「アルカリ酸熱トリートメント」であり、中性-微アルカリ領域で髪を膨潤させ、より効率良く髪の構造を作り直します。
現在はコチラが主流になりつつありますが、酸熱トリートメント以上に美容師のスキルに依存するため、まだ発展途上な技術と言っても良いかもしれません。
①低濃度のチオグリコール酸やシステアミン、サルファイトなどの還元剤を加え、毛髪の構造を作るシスチン結合を緩めます。
(いずれもアルカリ性で、酸熱トリートメントよりもクセを伸ばす力が強いです)
②その後、グリオキシル酸やレブリン酸などをアイロンの熱で固定し、新たに作られた架橋構造を固定し、形状を整えます。
(酸熱トリートメントとメカニズムは同じです)
総じて、縮毛矯正よりも低ダメージでクセを緩和し、疎水性を高めることで恒久的なトリートメントとして作用します。
その反面、酸熱とは異なり髪の構造を司るシスチン結合に作用(切断・再結合)するので、ダメージリスクは高くなります。
【美髪ストレート】

いわゆる「縮毛矯正」です。
サロンや美容師によっては「縮毛矯正とは異なる」と言われますが、基本的な薬剤のメカニズムは、ほぼ同等だと思われます。
毛髪の構造を作るシスチン結合を、薬剤と熱の力で不可逆的な構造変化を起こし、強制的にストレートにします。
よって、使う薬剤により「酸熱」「アルカリ酸熱」「縮毛矯正」に分かれると思ってください。
①還元剤(チオグリコール酸、システアミン、チオグリセリンなど)が毛髪のシスチン結合に作用し、毛髪の骨格を自由な形状に還られる状態にします。
②アイロンの熱処理により、髪を物理的に真っ直ぐにします。
③過酸化水素などの酸化剤の作用で、再びシスチン結合を再結合させることで、ストレートを固定します。
毛髪の形状を強制的に変化させるので、その効果は半永久的です。
しかし、毛髪のシスチン結合を壊した上で再構築させるので、負担も相応に高くなります。
イメージとしては縮毛矯正>アルカリ酸熱>酸熱という感じ。
薬剤の強さは効果の強さであり、またダメージの強さとも比例します。
どれが良い、悪いではなく、現在の髪のコンディションを見極め、適切な処理を行うのが美容師の仕事です。
【まとめ】
以上が、ヘアケアにおけるトリートメントの分類になります。
ホームケアトリートメントやシステムトリートメント(サロントリートメント)と、酸熱やアルカリを用いたトリートメントは質が異なるものなのは理解していただけたと思います。
リフォームに例えれば、
ホームケア=壁のひび割れを壁紙で隠す
サロンケア=壁のひび割れをセメントで埋める
酸熱・アルカリ酸熱・美髪ストレート=壁の骨組みごとリフォームする
と言う感じ。
よく挙げられるのが「サロンケアは意味ないので、ホームケアを重視すべき」という意見。
こういった意見は大半がマーケティングによるもので、そもそもの役割が違うことを理解していません。
どちらが良い・悪いではなく、働き方が異なるからです。
ホームケア用トリートメントの効果は長くて2~3日程度。
サロンケアで2週間~4週間。
酸熱トリートメントで2~3カ月。
アルカリ酸熱や縮毛矯正は半永久的に維持できます。
当然コストや時間がかかるものであり、一概にどちらが「効果的」や「コスパが良い」と判断できるものではないのが分かります。
毎日のケアで健やかな髪質を維持するのは非常に素晴らしいことですが、サロンで行うメニューには超えられない壁があることは、理解しておいてください。
また、これらのどれを選ぼうと、正解や不正解も存在しません。
というか、どれが今現在の自分の髪質に合うのかをセルフで判定は無理があると思います。
あくまでご自身の時間・予算に合わせ、美容師と相談の上、最適なものを見つけられるのが理想的だと思います。