界面活性剤について(中級編)

以前も一度触れましたが、再び界面活性剤のお話。

今回は中級編でございます。

 

昨今はヘアケアの”解析”をする人が増えたこともあり、多少は界面活性剤について知る機会も多いのではないでしょうか?

スキンケアに比べ後回しにされがちなヘアケアですが、界面活性剤を使う意味は共通する部分も多かったりします。

なので、ある程度参考になるんじゃないかと。

 

というのも、そのメカニズムや役割を知るには少々敷居が高いんですよね。

ヘアケアに使われる界面活性剤とは何者で、どう使われているものなのか?

出来る限り分かりやすく解説してみたんで、暇な時に読んでみてください。

 

 

 

 

 

 

【界面活性剤とは】


『界面活性剤』というと小難しいんですよね。

簡単に言うと「水と油の界面(境目)を無くす」成分の総称です。

大抵の化粧品に使いますし、マーガリンやアイスクリームやチョコレートなど、食品を含む身近なものにも幅広く使われています。

 

化粧品においての用途はザックリ

①汚れを落とす(洗浄)

②本来混ざらないものを混ぜる(乳化・分散)

③界面張力を下げる(浸透)

の3つ。

 

そして、界面活性剤は大きく4種類に分類されます。

その中で、ヘアケア用品における役割を簡単に説明します。

 

■アニオン界面活性剤
マイナスの電荷を持ち主に洗浄・起泡を担当。

乳化・分散に優れ泡立ちが良く、シャンプー、ボディソープ、洗顔料、入浴剤などに使われる。

洗浄成分のイメージは大体コレ。

 

■カチオン界面活性剤
プラスの電荷を持つので皮膚や髪の表面にくっつきやすく、毛髪保護や柔軟性の向上、帯電(静電気の発生)防止などに役立つ。

(濃度依存で)逆性石けんとしても使われ、殺菌効果を持つので防腐補助を目的に使われることもある。

皮膚や粘膜に対しての刺激が強く、流れ落ちにくいので髪や肌に対する残留性が強い。

 

■ノニオン界面活性剤
「非イオン系界面活性剤」とも呼ばれ、主に乳化・可溶化・分散を担う。

シャンプーでは泡の量を増やしたり、泡持ちを強くしたり。

イオン化しないので流れ落ちやすく、肌刺激を軽減する目的でも使われる。

 

■両性界面活性剤
プラスとマイナスの両方の性質を持ち、アルカリ領域ではアニオン、酸性領域ではカチオンの性質に変化する。

基本的に補助的な役割で、特にアニオン界面活性剤と組み合わせることで泡立ちや泡質の改善に使われる。

低刺激なものが多く、敏感肌向けのシャンプーに主成分として使われたりもする。

 

 

ざっとこんな感じでしょうか。

これらをアレコレと組み合わせて、ヘアケア用品が作られています。

 

界面活性剤の種類や配合量はシャンプーの洗浄力や泡立ち、トリートメントを流した後の感触、そして肌への刺激性に大きく影響します。

最適な界面活性剤の組み合わせと配合量を検討することが、研究開発において非常に重要なんです。

なので化粧品開発者は幾通りもの原料の組み合わせを考え、使用感や安全性、コストを鑑みて最良の処方を探すわけです。

 

 

 

 

 

 

【洗浄はアニオン】

シャンプーの目的は『洗浄』です。

頭皮や髪に付着する汚れを落とし、清潔を保つために使うものです。

 

髪に付着した埃などは水で洗い流せますが、皮脂汚れなどはそう簡単に落ちません。

なので水と油の界面を無くして洗い流すため、アニオン界面活性剤が必要になります。

これこそが、シャンプーの肝となる『洗浄性』でございます。

繰り返しになりますが、シャンプーの洗浄性を担うのは主に『アニオン界面活性剤』

水に溶けない皮脂汚れを界面活性剤が浮かすことで『洗う』ことが可能になります。

 

上図のように、マッチ棒の棒の部分(親油基=油に馴染む)が油性の汚れにくっつき、油汚れを引き剥がして包みます。

包まれた汚れはマッチの燃える部分(親水基=水に馴染む)と共に水で流されていくわけです。

ちなみに、図③のように引き剥がした汚れをマッチ棒が包む構造や、飽和状態になり親油基同士が集合した状態を『ミセル』と呼びます。
(全く覚えなくて良いです)

ミセルはシャンプーの粘度や洗浄性の構造を組み立てる上で大事な要素なんですが、これがまた難しい。

要は「色々と活性剤を混ぜると固くなる性質があるんよ」てことです。

余談ですが、粘性は作り手の匙加減でコントロールできますので「固い=濃い、シャバシャバ=薄い」というわけではありませんので、あしからず。

 

また、後述しますがシャンプーにはカチオン性高分子(の複合体)が配合され『コアセルベート』という被膜を作ります。
(コレも覚えなくて良いです)

使用前のシャンプー中には溶けきっているのに、すすぐ際に濃度が薄まると存在感を発揮するという面白い現象です。

詳細は難しいので割愛しますが「シャンプーを洗い流した時に、コンディショニング性が残るよう設計されている」という意味です。

これは髪に滑らかさを与える意味で極めて重要なものであり、シャンプーの使用感の決め手になると言っても良いでしょう。

 

以前はシリコーンが質感調整の大部分を占めていましたが、現在はかなり減ってきております。

シリコーンやサルフェート系(ラウレス硫酸Naとか)のアニオン界面活性剤に対するネガキャンが著しく、作っても買ってもらえないわけですよ。

今はアミノ酸系の界面活性剤が主流で、良くも悪くもサルフェート系と比べ洗浄性が劣るため、シリコーンを混ぜると残留しやすくなっちゃうんですよね。

 

なので代わりに高分子ポリマー(というかポリクオタニウム-10)が広く使われるようになりました。

言い方を変えれば、シリコーンの有無に関わらず「シャンプーとしての処方設計は基本的に変わらない」ということ。

結局は何かしらのコンディショニング性を残さないと、シャンプーした後にキッシキシになっちゃうんで。

 

主成分として「どのアニオン界面活性剤を使うのか?」は品質に大きく関わる重要な要素です。

それらを組み合わせて設計した洗浄性に対し、今度は「どのようにコアセルベートを作るのか?」を考えることが使用感に大きく関わるわけです。

私が常々言ってる「成分だけじゃ分かんない」理由はここにあるんです。

 

なので「シリコンシャンプーかノンシリコンシャンプーか」はそんなに大事ではないんですよ。

シリコーンを使わなくても高分子ポリマーは使うのでね、それだけで簡単に製品の優劣はつけられないという話ですな。

一応補足しておくと、シリコーンは(種類にもよる)コーティング性が強いので、実際の髪のダメージ度合いが計りにくいデメリットにはなり得ます。

 

 

 

 

 

【コーティングはカチオン】

「アニオンは洗浄担当」と言いましたが、カチオンはコーティングを担当します。

ヘアケアにおいては髪の潤滑性や静電気の防止を目的に使われ、いわゆる「コンディショニング成分」に該当します。

言い方を変えるとアニオンは(汚れなどを)奪う力を、カチオンは(油膜などを)与える力を持ち、真逆の性質を持っているとも言えるわけです。

 

上図のようにプラスとマイナスの面が互いにくっつきあい、髪表面が親油基で覆われることで滑らかな質感が生まれます。

特に帯電防止効果に優れ、髪に柔軟性を与えるためコンディショニングの中心となる成分なのであります。

 

 

「シリコーンと何が違うの?」という話ですが、基本的には似たような性質を持ちます。

シリコーンは主に髪の表面に膜を作ることで疎水性(水を弾く力)を高め、保湿したり熱ダメージから守ったりします。

単に重さや質感を調整するためにも使われますし、カチオン性を持たせたもの(アモジメチコンとか)もあったりします。

 

簡単にまとめると、

■カチオン界面活性剤
・帯電防止、柔軟性、摩擦軽減
・比較的しっとり、滑らかな感触
・種類や濃度により刺激あり

■シリコーン
・疎水性、潤滑性、ツヤ感、保護
・比較的ツルツル、サラサラ(種類による)
・基本的に低刺激

 

実際にはバラではなく、これらを組み合わせることで、互いの弱点を補う形で製剤します。

例えば「カチオン性成分でダメージ部を中心に補修し、シリコーンや油剤で被膜を作りツヤ感を出す」という感じ。

多少の例外はあれど、基本的にはほぼ全てのトリートメントがこのような処方で作られます。

 

 

また、ヘアケアに使われるカチオン性成分は『四級アンモニウム塩(〇〇クロリド、〇〇ブロミド)』と『三級アミン塩(〇〇アミン)』に分けられます。

その性質は割愛しますが、四級アンモニウム塩は常にプラス電荷を持ち、髪や肌表面のマイナス電荷に強く吸着します。

対するアミン塩はpHによって電荷の有無が変化するため、条件によっては吸着性が弱まるので刺激性が低いとされています。

 

ただ刺激性に関しては疎水基の鎖長や種類によってまちまちなので、一概に「アミン塩だから低刺激」と言える感じでもないような気もします。

四級アンモニウム塩の方が圧倒的に乳化に優れているため、一般的に広く使われることが多いです。

 

 

そして大半のコンディショナーやトリートメントには「カチオン界面活性剤+高級アルコール+水」による『αゲル構造』というものが作られます。

詳細は難しいので割愛しますが、このαゲルを水で希釈した(=濡れた髪に塗布した)時の粘度がダイレクトに使用感に関わるということ。

製剤のテクスチャーや安定性のカギでもあり、補修成分や油性成分のデリバリーを担う処方技術の中心でもあります。

しっとり濃厚な質感や、サラサラで軽い質感はこういった技術でコントロールされるものなんです。

 

 

 

 

 

 

 

【まとめ】

このようにシャンプーやトリートメントを作るときは、アニオン界面活性剤やカチオン界面活性剤、その他ノニオンや両性界面活性剤が使われます。

そして、それらを組み合わせて製品が完成するのは理解していただけたと思います。

 

シャンプーで言えばアミノ酸系やPPT系界面活性剤など、それ自体が肌に優しく補修性を持つものもあります。

しかしそれらを活かす技術力があって初めて活きる素材でもあり、何でも配合したから効果的になるわけではありません。

成分表示だけで品質を判断できるほど単純なものではないですし、数回使っただけで良し悪しを判断できるほど浅いものでもありません。

最近は「シャンプーだけでサラサラ」を謳い文句にやたらコーティング性が強いヘアケアも多いです。

私から見れば洗浄性が足りずコーティング一辺倒なので、むしろ髪がベタついてる方が増えている気がします。

コレ系のシャンプーはむしろトリートメントの効果が弱まるので、控えて欲しいなというのが本音です。
そもそも頭皮に残ると肌荒れるしね

何事もバランスが大事。

 

このような解説は理解が難しく、読むことすら面倒なものです。

実際に書いてる私も勉強するのダルいですからね(笑)

ただ、こうした面倒なことを少しでも覚えておけば単純論法な成分解析に意味が無いと悟れるようになります。

 

美容の世界は無知だと損をする世界。

少しずつ知識を蓄え、賢いセルフケアができるよう頑張りましょう。

 

 

 

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