水素のヘアケアについて

最近は水素を配合したシャンプーが増えています。
「髪が潤う」
「白髪が減る」
「抜け毛が減る」
「頭皮や顔のたるみが改善される」
などなど、SNS上では様々な効果効能が紹介され、一説には「最強の抗酸化である」とも言われております。

これらは化粧品の紹介としてはアウトな表現ですが、実際の効果はどの程度だと思われるでしょうか?
今回はヘアケアに置いて、水素がもたらす効果やコストパフォーマンス、製造の裏側、そして選ぶべき商品の考え方を解説していきます。

【水素が”効く”場所】

水素がもたらす抗酸化作用は実際のエビデンスがあり、先進医療としての研究も進んでいるようで、頭皮ケアとして有効であると考えられています。

ヘアケアや頭皮ケアに効果的らしい水素ですが、個人的な意見として、恐らく効果的なのは「頭皮ケアとして」に限定されると考えられます。

水素には「還元作用」があり、老化や細胞ダメージの原因となる「ヒドロキシラジカル」を選択的に除去し、無害な水(H2O)に変える力を持ちます。
これは頭皮や毛根を酸化ストレスから守り、カラーなどの残留過酸化水素の無害化に働きかけ、頭皮の負担を大幅に軽減することに繋がります。

その一方で、髪のケアとしてはほとんど働きかけないと予想されます。
毛髪補修の基本は「ダメージホールを何かで埋める」ことですが、水素は分子が桁違いに小さいため、そのような効果は見込めません。
壊れた組織を繋ぎとめる力はなく、これ以上のダメージを食い止める「壁」のような役割だと考えられています。
つまり「酸化ストレスを軽減させる」のであって「毛髪のダメージを補修する」わけではないのです。

実際に水素シャンプーで髪が潤い、パサつきが改善された方もいると思いますが、それは水素ではなく他の補修成分によるものだと考える方が妥当でしょう。
何より、様々なメーカーの説明を見てもエビデンスを紹介するものは見当たらず、ただ「水素が良い」という曖昧な説明に終始しているのが証拠かと。

まずはこの基本的な部分を理解した上で、水素発生のメカニズムと特性、その剤型について触れてみましょう。

【メカニズム】

①水素化マグネシウム
最も高濃度、かつ確実に水素を発生させるものとして、まず「水素化マグネシウム」が挙げられます。
これは水と触れることで化学反応を起こし、水素を発生させます。
反応スピードが速く、シャンプー中に速やかに水素を発生させるので、主にサロンカラーの後処理として採用する美容室もあります。

②シリカハイドライド
シリカ(ケイ素)などの多孔質素材に水素を吸着させ、特殊な処理で水素を閉じ込めたもの。
成分名としては「シリカ」や「ケイ酸Na」などが該当します。
マグネシウムと比較して反応が緩やかで持続性があるとされ、1剤式のボトルタイプに「水素を閉じ込める仕組み」として取り入れられています。

③水素ガスの添加
高圧充填などの特殊な処理により、水素ガスを直接溶かし込んだもの。
水素を発生させるのではなく「予め溶け込んでいる」というのがポイント。
商品として完成した時点で水素の反応は終わっており、また開封した時点で水素は大気中に逃げ出してしまいます。

【”剤型”が大事】

私個人の考えではありますが、実際に販売されているものは2種類の剤型に分けられ、その差はかなり大きいと思っています。

■ミニパウチなど専用の容器型(上記の①が該当)
小分けにされた専用容器で、その都度混ぜて使うもの。
ヘアケアとは関係ないですが、水素系入浴剤はほぼ全てこれだと思います。

■最初から混ざっているボトル充填型(上記の②、③が該当)
そのままシャンプーやトリートメントをボトル容器で売っているもの。

で、前者の方を圧倒的にオススメします。

水素は宇宙で最も小さな分子(分子量:2)であり、あらゆるものを透過するサイズです。
だからこそ他の抗酸化物質(ビタミンCとかポリフェノールとか)が入り込めない微細な隙間まで到達し、活性酸素に働きかけるわけです。

それは一方で「小さすぎて密閉するのが難しい」ということでもあります。
例えばプラスチックボトルを構成する分子などは容易に通り抜けますので、専用の容器(アルミとか)を用意する必要があります。

つまり、最初から混ざっている1剤式の水素シャンプーやトリートメントでは、使い切るまでに有効な水素濃度が維持されていると考えにくいのです。
また、仮に水素の反応が残った状態で密封すれば体積が変化し、容器が破裂する可能性があります。

細かく言えば、シャンプーとして使う”瞬間”に水素が発生していないと意味がありません。
なので容器に水素を閉じ込めるタイプでは、効果が限定的だと考えられるわけです。

いずれにせよ、水素そのものの効果の話以前に「使う時に水素が有効な状態で残っているのか?」という点がハッキリしていないように思います。

【製造コストが高い】

実際に水素ヘアケア商材を見ていると、どれも平均的に高価格帯なものが多いです。
これは原料コストと、製造コストに起因します。

まずは原料コスト。
よく使われる水素化マグネシウムなどの特殊原料は非常に高価です。
もうこれだけで販売価格も上がります。

そして、容器。
水素を逃がさないためのアルミ製のボトルは、一般的なプラスチックボトルよりもコストがかかります。

あとユーザーからは見えないコストとして、湿気に弱い原料の保管や、水素濃度測定のための試験料などが加わります。
このように、あらゆる面でコストがかかるので、どうしても販売価格が高くなる傾向があります。

もし弊社で取り組むのなら、300mlで5,000~6,000円くらいになるだろうと思います。
言い方を変えると、コスパをアピールする低価格商品では水素の実効性に疑問符がつくと考えても良いかもしれません。

なので個人的なオススメとしては、
①1剤式のプラスチック容器のものは避ける
②その都度パウチのものを混ぜる
③ヘアケア主体ではなく、スカルプケアを謳うメーカーを信用する。
のが、合理的な考え方だと思います。

【まとめ】

水素は頭皮ケアとしては有効性が見込めるものの、ダメージケア等の髪の毛に働きかけるものではありません。

水素分子に還元(抗酸化)作用があるという研究は進んでいるものの、まだまだ動物実験や試験管レベルのお話。
洗い流すシャンプーやトリートメント(=接触時間が短い)で、どれほどの効果があったのかを示す臨床データはまだまだ少ない(=科学的に確立されていない)のが現状です。

特に「白髪が減る」や「抜け毛が減る」という具体性のある効果を裏付ける高精度な研究は、知っている限りでは聞いたことないです。
良くも悪くも、あくまで「一部の美容師がそう主張している」だけなのです。

仮に、今現在お使いの水素シャンプーやトリートメントで髪の状態が良いと思うのであれば、それは水素ではなく他の補修成分によるものだと理解してください。

水素は「可能性に満ちているけど、上手く使いこなす手段が見当たらない」という、難しい素材です。
また白髪や脱毛の抑制に対し、どれだけ効果的なのかは未だ議論の余地はあります。

それを差し引いても、「頭皮のサビをリセットする」ものとしては非常に優秀ではないかと予想されますし、今後はより有効に使える日が来るのかもしれません。