「白髪が目立ってきたから白髪染めを始めたけれど、使ってるうちに白髪が増えている気がする…」
「白髪染めが原因で、髪を黒くする細胞が壊れるって本当?」
このような不安は、美容に関心の高い方々にとって共通の悩みではないでしょうか?
インターネット上では「白髪染めが白髪を増やす」という説が広まっていますが、この背景には、科学的な事実と誤解が混ざり合った情報が存在します。
今回はヘアケア製品の開発に携わる研究員の視点から、白髪の原因のメカニズムと、白髪染め(酸化染毛剤)が頭皮に与える影響についてを解説。
皆様が安心してヘアカラーを楽しめるため、正しい知識とケア方法をご紹介します。
【白髪が増えるメカニズム】

まずは大前提の事実として、白髪の根本的な原因は「幹細胞の枯渇」と「加齢」です。
毛髪の色を決めるのは、毛根の奥にある色素細胞「メラノサイト」ですが、このメラノサイトに指令を出し、供給しているのが毛根の特定の場所に存在する「メラノサイト幹細胞」です。
白髪の発生は、主に以下の2つの要因によって引き起こされます。
①メラノサイト幹細胞の枯渇:
加齢とともに、メラノサイト幹細胞の数が徐々に減少し、最終的に色素細胞を供給できなくなります。これが白髪の最も根本的な原因です。
メラノサイトは、色素生成の過程で活性酸素を自ら発生させるため、もともと酸化ストレスに脆弱な特徴があります。
②過酸化水素の蓄積
体内には、活性酸素を無害化する酵素カタラーゼが存在します。
しかし、加齢に伴いカタラーゼの活性が低下すると、細胞内で過酸化水素(活性酸素の一種)が分解されずに蓄積します。
②メラノサイトの機能停止
蓄積した過酸化水素は、メラニン色素を合成する鍵となる酵素チロシナーゼの働きを阻害します。
これにより色素の生成が阻害され、白髪となっていきます。
つまり白髪は遺伝や加齢といった、体の内部で進行する自然な現象が主な原因です。
言い方を変えると「白髪染めの有無にかかわらず、誰にでも起こる現象」というわけです。
【白髪染めが白髪を増やす?】

先に結論から言えば、「白髪染めが白髪の総数を明確に増やす原因である」という臨床研究による証明は、今のところ存在しません。
(※関連性が無いという意味ではなく、因果関係の証明がされていないという意味です)
白髪染めの使用後に「白髪が増えた」と感じるのは、多くの場合、以下の理由によるものです。
①時間差による錯覚
白髪染めを続ける間も、体内の老化現象は進行しています。
白髪を染めてから数週間後に伸びた髪では、自然に白髪が増加しているタイミングと重なっている可能性は否定できません。
②新生部(根本)のコントラスト
染めていたことで目立たなくなっていた根本の白髪が、伸びてきたことによりコントラストが際立ち「急に増えた」と感じやすくなります。
いずれも極めて自然なことであり、仮に白髪でなくとも新生部は目立つものです(いわゆるプリン状態)
「白髪染めによる弊害で白髪が増える」ということが証明されてない以上、それは事実ではありません。
このあたりは「そうかもしれないし、違うかもしれない」という曖昧な状態であり、モヤモヤする方もいらっしゃると思います。
それを踏まえても「可能性の一つ」程度に留めておき、過度に心配する必要は無いと思います。
【白髪染めの本当のリスク】

では、「白髪染め=悪」というイメージはどこから来るのでしょうか?
それは、白髪染めに不可欠な化学反応である「酸化ストレス」にあります。
白髪染め(酸化染毛剤)は、色を発色・定着させるために酸化剤(主に過酸化水素)を使用します。
この化学反応の過程で、細胞にダメージを与える活性酸素(フリーラジカル)が一時的に発生します。
そして、この活性酸素はメラノサイトの機能低下を招く一因となり得ます。
メラノサイトは他の細胞と比べて酸化ストレスに非常に弱いため、ダメージを受けやすいのは事実です。
その一方で「薬剤が頭皮に残って活性酸素が発生し続ける」という説がありますが、これはメカニズムの誤解です。
活性酸素の大量発生は、主に薬剤を塗布している「染色反応中」に起こります。
また、美容室で染めた際は、その後の洗浄と酸化防止処理が行われます。
大抵の場合は専用のシャンプーや、過酸化水素やアルカリ除去剤を併用することで、残留物を無害化させ洗い流します。
(※ホームカラーの場合は、この限りではありません)
むしろ、洗い残しによって起こる最も大きなリスクは、頭皮の「炎症」や「アレルギー反応(かぶれ)」です。
この慢性的な炎症こそが、頭皮環境を悪化させ、結果的にメラノサイトの機能回復を妨げる要因となります。
つまり、
白髪染めをする
↓
活性酸素が発生する
↓
メラノサイトに影響し、白髪が増える
という一連の流れは、限定的には正しいと思われます。
その一方で「白髪染めをしなければ、白髪が増えないのか?」という点には、まだまだ議論の余地があるとも思います。
大事なのは白髪染めの良し悪しというよりは、その後のケアの在り方だと思っています。
炎症やアレルギー、活性酸素の抑制を含め、適切な対策を取ることが美容の在り方ではないでしょうか
【まとめ】
きちんとメカニズムを理解しておけば、白髪染めで白髪が増えるという意見は出てきません。
大切なのは、正しい知識と適切なケアを組み合わせること。
酸化ストレスの影響を最小限に抑え、美しく健康な頭皮環境を維持すつことです。
必要なのは、頭皮の酸化を食い止めるケア。
ご自身でできるケア方法としては、
①白髪染めはサロンで染める。
サロンカラーではカラー後のシャンプーの際に、過酸化水素を分解する専用の薬剤を使います。
100%無害化できるわけではありませんが、この処理剤も日進月歩で進化しており、効率的に分解できる研究が進んでおります。
これがあると無いとでは、カラー後の頭皮環境に大きな差がつきます。
②ホームケアシャンプーの吟味
頭皮の残留成分や活性酸素を速やかに無害化させるため、抗酸化作用のあるシャンプーをオススメします。
代表的な成分としては、
・ヘマチン
頭皮ケアやカラーケアとして代表的な成分です。
強い抗酸化性を持ち、毛髪のケラチンと結合することでダメージケアにも有用です。
・ザクロ種子エキス
エラグ酸による強い抗酸化性で、チロシナーゼの活性を阻害します。
・アスタキサンチン
ご存じ、抗酸化性の代名詞。
・トコフェロール、オリザノール
ビタミンE誘導体やコメ由来のポリフェノール、高い抗酸化性があります。
・チャ葉エキス、ムラサキ根エキスなどの植物由来エキス
一般的な抗炎症成分は抗酸化作用も含まれることが多く、アンチエイジングに用いられる成分の大半が該当します。
ちょっと番外編として
・フルボ酸(フムスエキス)
・EDTA-2Na
キレート剤と呼ばれ、微量の銅や鉄などを無害化することで間接的に酸化抑制に働きます。
ハイトーンカラーでは金属イオンの除去などは必須に技術になりますが、白髪染めでもそれなりの効果は見込めるかと。
これらが、一般的によく使われます。
注意事項として、これらの成分の大半は濃茶~黒に近い色を持っており、実際の推奨配合濃度(原料メーカーによる効果と安全性を担保できる濃度)の1%程度を加えると、かなり色がつきます。
「〇〇エキス配合!」をPRしても、無色透明(=推奨濃度に達していない)ケースも多々ありますので、しっかりと効果を望むのであれば、まずは色で判断することを強く推奨します。