「色」が教えてくれること。

たまに付き添いでドラッグストアに行きます。
行くといつもビックリするのですが、本当に世の中には化粧品が溢れていることを再確認しますね。

その中で、仕事柄リサーチも兼ねてシャンプーのチェックをしたりしますが、私がいつも注目する点があります。
それは、「色」

実は、シャンプーの「色」や「泡質」には、全成分表示という「文字情報」だけでは読み取れない、メーカーの思想と誠実さが現れます。
今回は、美容師として処方研究に携わる私の視点で「ボトルの向こう側」のお話をしましょう。

【色は濃度の目安】

まず、前提として知っておいていただきたいのは、多くの機能性成分(髪を補修したり、頭皮環境を整えたりするもの)には「固有の色」があるということ。

「高級アルコール系」を筆頭に、(安全性のため)超高度に精製された洗浄成分は、水のように無色透明です。
しかし、PPT系などの高価な機能性洗浄成分たちは、淡黄色~茶褐色のものが多いです。

シャンプーの液が深い琥珀色や褐色をしているとき、それは「機能を発揮する濃度」で配合されている可能性を示します。
明かりに透かした時のその色の深みは、成分がどれだけ高密度に凝縮されているかの「目安」なのです。
(※その反面、タンパク由来のものは極稀にアレルゲン感作の懸念があります)


では、具体的にどのような成分が液に色を付けるのでしょうか。
私がシャンプーのサンプルを作る際、特に「色」に反映される代表的な成分を挙げます。

①PPT界面活性剤や加水分解○○
コラーゲンやケラチンなどのタンパク質を分解して作られる洗浄成分です。
原料は綺麗な琥珀色をしています。
補修成分として添加する「加水分解ケラチン」などは、総じて黄色っぽい粉体が多いです。

②ヘマチン
ダメージ補修や抗酸化を目的に配合されますが、原液は真っ黒です。
ちょっとでも入れると茶褐色になり、1~2%の配合で濃褐色~黒っぽい色になります。
非常に優れた成分ですが、一定の濃度を超えて配合するとゴワつきの原因になります。

③植物エキス類
カンゾウ根エキスやセンブリエキス、チャ葉エキスなど、一般的に炎症の抑制や抗酸化性を目的に使われます。
これらも基本的には淡茶色~濃茶色。
ポリフェノールや特有の色素を含み、高濃度になればなるほど、液に深い「渋み」のある色を与えます。

【色の”由来”】

かといって「色がついていれば良い」というほど、単純な話でもありません。
理由は2つ。

①そもそも無色の原料もたくさんある
②着色料や、色合いの濃い成分を狙って配合する

特に注目すべきは②です。
「赤色○号」や「青色○号」などの着色料は分かりやすいのですが、それ以外にも直接機能性に関わることの無い、着色を目的とした成分があります。

代表的な例を挙げると、「カラメル」や「シアノコバラミン」などがそれに当たります。
カラメルは濃褐色、シアノコバラミン(ビタミンB12)は鮮やかなピンク色で、全く意味が無いわけではないですが、一般的には着色を目的に使われます。

嫌な言い方をすると「原料を高濃度で配合しているように」見せることができるわけです。
だからと言って「これらが配合される=品質が低い」というわけではありませんが、かといって着色以外の理由で配合されることは珍しいと思われます。
つまり、PPTなどの色が付つく機能性原料の配合量が分かりにくくなるわけです。

ただ、これらは配合成分なので「全成分表示」に必ず表示しなくてはなりません。
つまり「機能性原料を高濃度で配合」しているのか、もしくは「機能性原料を配合しているように見せているのか」を判断する上で、非常に分かりやすい目安だと思います。

【訴求性に齟齬は無いか?】

ここで誤解していただきたくないのは、「色が濃ければ常に良い」というわけではないということです。
繰り返し念を押しておきますが、「色の濃さ=品質」ではありません。

先程も述べたように、原料が無色透明だったり、真っ白な粉体だったりすることも多いからです。
安全性や刺激への配慮に重きを置く製品では、むしろ無色透明になる処方も数多く存在します。

何より、ヘアケアにしてもスキンケアにしても、最終的には使ってみなければ、真の品質は分かりません。
大事なのは「色で品質を測る」のではなく、「色で誠実さを測る」こと。

もしメーカーが「ダメージ補修」や「エイジングケア」を謳い、高価なPPTやヘマチンの配合をアピールしているのなら、その「色」は主張に見合った色合いになるはずです。
そして、そういった主張で商品をアピールするのなら、先程挙げたような着色料は必要ありません。

インフルエンサーやユーザーが「成分推し」で商品を選ぶ時代ですので、そういったニーズに合わせた訴求性でメーカーは商品を作ります。
こういった時代の流れが、良い商品を生む「壁」となっていることは、化粧品業界に従事する方なら理解できると思います。

商品の「色」は「結果」です。
つまり、私にとって「色」を確認する行為は、「メーカーの言葉と、中身が一致しているか」という誠実さを計る作業だと言えます。
その色が語る「事実」こそが、メーカーとしての姿勢が出やすい部分だと思いますので。

【まとめ】

私が今でも店頭で他社製品を手に取るのは、決して否定するためではありません。
偉そうに言わせてもらえれば、市場の「限界」を知るためです。

大量生産・大量消費を前提としたパブリック商品には、どうしても「コスト」という壁があります。
広告費や流通コストを差し引けば、中身の原液にかけられる費用は自ずと決まってしまいます。

だからといって品質が低いとは思いませんし、むしろスケールメリット(大量生産)によるコストダウンで、「この価格で凄い」と思わされることの方が多いです。

一方で、広告費を削り、品質にコストをかけるメーカーも少なからずあります。
シャンプーだけに限って言えば、界面活性剤の最高峰は「PPT系」ですので、適切な量を配合すれば”絶対に”色はつきます。

コストで処方を諦めないプライドが、その一滴の色に凝縮されているわけです。

次にあなたがシャンプーを選ぶとき、試しにボトルを明かりに透かしてみてください。
その色は、あなたの髪の未来を照らす、嘘のないシャンプーでしょうか?